はじめに
月次レポートの国別比率を、ぼんやり眺めていた。
米国が六割を超えている。 新興国は一割ほど——。
この数字は、これからも同じなのだろうか。 そう思った瞬間、少しだけ落ち着かなくなった。
その比率は、誰かが決めたものではない
全世界株式の中身は、時価総額で決まっている。
運用会社が「新興国を増やそう」と判断して動かしているわけではない。 値上がりした国のウエイトは自然に上がり、沈んだ国は下がる。
つまり比率の推移は、予想の記録ではない。 世界の評価が動いた跡なのだ。
長い目で推移を眺めてみる
過去を並べると、思ったより上下している。
・二〇〇〇年代後半、新興国のウエイトは今より高い時期があった
・その後は米国株の強さに押され、じりじりと下がった
・新興国の中でも、中国が落ち、インドが伸びた
一本調子で増えても減ってもいない。 振れ幅の中を行き来しているだけ、とも言える。
予測が当たらない理由
「経済規模なら新興国のほうが大きくなる」とよく聞く。
ただ、経済規模と株式市場の時価総額は一致しない。 上場企業の数、市場の開放度、通貨の評価——変数が多すぎる。
さらに、どの国を新興国に分類するかは指数提供会社によって違う。 分類が見直されれば、比率はそれだけで動く。
だから私は、この先の比率を言い当てられない。
当てにいって外した記憶
若い頃、株式投資で損を出して一度退場した。
その後もコロナショックのとき、J-REITに集中していて大きな含み損を抱えた。 当時の生活防衛資金は普通預金にあって、それだけが頼りだった。
外したのは相場が悪かったからではない。 当てにいく設計にしていたからだった。
いまは全世界株式を軸にしている。 生活防衛資金は、最近になって個人向け国債へ移した。
比率を決めないという選択
新興国が伸びると思うなら、買い足せばいい。 落ちると思うなら、削ればいい。
でもそれは、毎年その判断を続ける義務を自分に課すことでもある。
私は、それをやめた。 比率の決定を市場に預けたことで、下落局面でも積立を止めずに済むようになった。
経済的自由とは、資産額だけの話ではないのかもしれない。 値動きに判断を奪われない状態も、自由のひとつではないだろうか。
選択肢を持つというのは、選び続けることではなく、選ばなくていい設計を持つことだった。
まとめ
今日ひとつだけ、手元のファンドの国別比率を開いてみてほしい。
数字を覚える必要はない。 「これは自分が決めた比率ではない」と確かめるだけでいい。
その一行が、次の下げ相場で手を止めさせてくれるかもしれない。

