はじめに
郵便受けから抜いた封筒が、そのまま引き出しの奥へ入っていく。 あとで読む、と決めたはずの書類が、季節をふたつ跨いでいく——。 そんな封筒が家のどこかに眠っている人は、きっと少なくない。 年金の資産も、同じように静かに置き去りにされることがあるのだ。
放置された資産に起きること
企業型DCは、その会社を離れると加入資格を失う。 そこから原則6か月以内に手続きをしないと、資産は国民年金基金連合会へ自動移換される。 自動移換の間、資産は現金のまま置かれる。 運用されず、それでも管理手数料は引かれ続ける。
・移換時と毎月の手数料が発生する
・運用されないので増える余地がない
・受給開始年齢の判定で不利になる場合がある
知らないうちに、ゆっくり削られていく。 そこが一番こわいところではないだろうか。
なぜ後回しになるのか
制度が難しいというより、タイミングが悪いのだと思う。 働き方が変わる時期、人は生活の組み直しに追われる。 住まい、保険、日々の段取り。 そのなかで「6か月」という期限は、あまりにも静かだ。 督促が来ないものは、忘れられる。
私も若い頃、株式投資で大きな失敗をして一度退場している。 値動きから目を逸らし、確かめないまま時間だけが過ぎた。 向き合わなかった分だけ、損は静かに育っていたのだ。
移換という選択の中身
やることは、実はそれほど多くない。 iDeCoを扱う運営管理機関を選び、移換の書類を出す。 選ぶ基準は、だいたいふたつに絞られる。
・口座管理手数料が低いこと
・低コストの全世界株式インデックスなど、長く持てる商品があること
移換後は、自分で掛金を出すか、運用だけを続けるかを選べる。 止まっていたお金が、もう一度働きはじめる。
数字より先に整うもの
手続きを終えた人の話を聞くと、増えた額より先に「気持ちが軽くなった」と言う。 把握できていない資産は、小さな不安として残り続ける。 金額の大小ではなく、見えているかどうか。 それが心のざわつきを決めていた。
経済的自由は、大きな数字から始まるのではないかもしれない。 自分のお金がどこで、どう働いているかを知っていること。 選択肢を持つとは、たぶんそういう状態のことだ。
まとめ
今日ひとつだけ、過去に積み立てた年金資産の居場所を確かめてみてほしい。 書類一枚で、止まっていた時間が動き出すかもしれない。

