はじめに
「資産の4%を取り崩せば、30年は枯れない」——。
初めてその言葉を知ったとき、肩の力が抜けた気がした。
ゴールが数字で見える。 それだけで、不安が薄まったのだ。
けれど何年かして、手が止まった。 この4%は、どこの国の、誰の話だったのだろう。
4%という数字は、条件つきだった
元になった研究は、アメリカの過去データを使っている。
米国株と米国債の組み合わせ。 期間は30年。 物価の調整も、米国の物価で行われている。
つまりあれは「この条件なら成立した」という記録だった。 どこでも通じる法則ではなかったのだ。
条件が変われば、結論も揺れる。 それだけの話だった。
日本で暮らすと、前提がずれていく
私たちが払うのは円だ。 食費も、住まいの費用も、社会保険料も円で出ていく。
一方で全世界株式の中身は、多くが外貨建て。 為替が動けば、同じ4%の重さも変わる。
さらに取り崩しには税と手数料がついてくる。 特定口座なら売却益に約20%の課税がかかる。 NISA口座なら売却益は非課税だ。
どちらから売るかで、手元に残る額は変わる。 率だけ見ていては、そこに気づけない。
数字よりも、崩れ方を見ておく
私は若い頃、投資で損失を出して一度退場している。 その後の暴落では、集中投資のツケで大きな含み損を抱えた。
学んだのは、率ではなく順番だった。
下がった年に多く売ると、回復する分まで削ってしまう。 だから下落局面でも、積立は止めない。
生活防衛資金は1年分。 最近、それを個人向け国債(変動10年)に移した。
額面が減らなくても、同じ金額で買えるものは減っていく。 その静かな目減りが怖かったからだ。
国債が物価に勝てるとは限らない。 ただ最低金利は保証され、半年ごとに金利が見直される。 置いていかれにくい、という程度の安心だった。
4%は目標でなく、点検の道具
4%は答えではなく、問いを立てる道具かもしれない。
・取り崩すのは課税口座か、NISAか
・円で必要な生活費はいくらか
・下がった年に売らずに済む余地があるか
この三つを確かめるだけで、数字の顔つきが変わる。
経済的自由とは、4%を守り切ることではないのだろう。 下げ相場で売らずにいられる——その選択肢を持てることではないだろうか。
まとめ
今日ひとつだけ、自分の取り崩しがどの口座から始まるのかを確かめてみてほしい。
前提を自分の生活に置き換えたとき、4%は初めて自分の数字になる。

