はじめに
「教育費はこれで積んでおけばいい」——そう聞いた。
こどもNISAのことだ。 2026年3月に法律が成立し、2027年1月に始まる。 0〜17歳が対象。年間60万円、非課税で持てるのは600万円。 つみたて投資枠の対象商品を、定時・定額で買っていく。 非課税期間は無期限で、18歳になれば手続きなしに成人のつみたて投資枠へ移る。
だが私が引っかかったのは、入口ではなく出口だった。
境目は誕生日ではない
原則として払出しには制限がある。 その境目は12歳の誕生日ではない。 その年の3月31日に12歳以上である年——小学6年生の年度の1月1日以降だ。 つまり中学に上がる暦年からだ。
この年以後は、本人の入学金や授業料などの教育費、または生活費に使う旨の書類を親権者等が出せば払い出せる。 本人の同意を証する書類を添えて。
それより前の年は、住んでいる家屋が災害で全壊した、あるいはこれに類する事由があり、税務署長の確認を受けたときだけ。 半壊や一部損壊では、原則として届かない。 しかもこの場合は、口座の中身を全て払い出すことになる。必要な分だけ取り崩す、はできない。 この災害の例外は年齢を問わない。
「12歳から引き出せる」と覚えると、ずれる。 4月2日以降に生まれた子なら、最大で9か月ほど遅い。 1月1日から4月1日生まれなら、逆に3か月ほど早いのだ。
要る時期と、出せる時期
小学校のうちの塾、中学受験——出せない年に山が来る家もある。 この口座は「いつでも使える教育費」ではない。
・小学校までの支出は、別の現金で持っておく
・中学に上がる暦年以降は、書類の要る払出しになる
・災害は、家屋の全壊など限られた場合だけ、年齢を問わず例外になる(全額の払出し)
現金化の順番は、必要な時期から逆算するしかないのだ。
600万円は別枠ではなかった
600万円は、成人の非課税保有限度額1,800万円の内数だ。 こどもNISAと成人後の枠の簿価を合算して、1,800万円に収める設計。 18歳までに600万円を埋めれば、その子は残り1,200万円から始めることになる。 家族全体の枠が増えるわけではない。
ただ、この先食いがコストになるのは、その子が将来1,800万円を自力で埋めきる場合に限られる。 そこまで行かないなら、理論上の話にとどまる。
軸は速さではなく、満額にするかどうか。 とにかく満額が最善とは限らない。
誰のお金として渡すのか
子ども名義の口座に親の資金を入れれば、それは贈与だ。 基礎控除は受贈者ひとりにつき年110万円。年60万円はその内側に収まるが、ほかの贈与と合算して数える。
ジュニアNISAは2023年末で終わっていて、こどもNISAは自動では引き継がれない。 新たな口座開設が必要で、受付の時期や書類は金融機関ごとに違う。使っている会社で確かめたい。
選べる状態をつくる
若い頃の株式投資で退場し、コロナショックではJ-REITに集中して大きな含み損を抱えた。 学んだのは、期限のあるお金と期限のないお金を混ぜないことだった。
生活防衛資金は最近、全額を個人向け国債(変動10年)へ移した。 額面が減らなくても、同じ金額で買えるものは減っていく——それが嫌だった。 ただ国債は金利に連動するだけで、物価に勝てるとは限らない。
経済的自由とは、資産額の話ではないのかもしれない。 必要なときに必要な形で取り出せる。その選択肢を持つことではないだろうか。
まとめ
制度の細部は、たいてい出口に置かれている。
今日ひとつだけ——その子の「3月31日に12歳」がいつ来るのか、数えてみてほしい。 そこから逆算すると、いま持つべき現金の形が見えてくる。

