はじめに
年60万円という数字を見て、まず電卓を出した。
月にすると5万円。 児童手当だけで、この枠は埋まるのだろうか——。 そんな素朴な問いから、この試算は始まった。
児童手当だけで、埋まるのか
先に答えを書くと、年間の枠は埋まらない。
児童手当は3歳未満が月1万5千円、3歳から高校生年代までが月1万円。第3子以降は0歳から高校生年代まで一律で月3万円だ。 第1子・第2子なら年18万円か年12万円で、年間投資枠60万円の2割から3割。第3子以降でも年36万円、6割どまりだった。
ところが総額で見ると、向きが変わる。
0歳から18歳到達後最初の3月31日までを全額投じると、第1子・第2子は合計234万〜245万円。非課税保有限度額600万円の4割ほどだ。 第3子以降は満額で648万〜681万円。今度は枠のほうが先に尽きる。
ただし第3子の数え方には、22歳到達後最初の3月31日までの兄姉も含まれる。上の子がそこを過ぎると下の子は第2子に繰り上がり、月1万円に下がる。年齢差が開くほど月3万円の期間は短く、ざっと計算した限りでは6歳前後を境に、総額は600万円に届かなくなる。大学生年代の子を数に含めるには、自治体への確認書がいる。
埋まらないのか、入りきらないのか。 きょうだいの人数と年齢差で、答えは逆を向いた。
制度の輪郭を先に確かめる
こどもNISAは2027年1月に始まる。
対象は0〜17歳、年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円。 買えるのはつみたて投資枠の対象商品で、定時・定額の買付に限られる。 非課税保有期間は無期限で、18歳になると特段の手続きなく成人のNISA(つみたて投資枠)へ移る。 原則は払出し制限があり、その年の3月31日に12歳以上である年——中学校に上がる年からは、本人の教育費や生活費のためなら払い出せる。 それより前でも、災害で家屋に被害が出た場合は年齢を問わず払い出せる。
そしてこの600万円は、成人の非課税保有限度額1,800万円の内側にある。 こどもNISAと、成人後のつみたて投資枠・成長投資枠の簿価を合算して1,800万円まで、という仕組みだ。 使い切れば、その子は残り1,200万円から自分の投資を始めることになる。
とにかく満額、が最善とは限らない。 もっとも、この先食いが本当に効くのは、その子がいずれ1,800万円を自力で埋めきる側に立ったときだけだ。 そこまで行かなければ、理論上のコストのまま終わる。
ジュニアNISAの自動的な引き継ぎではない。 新たに口座開設の手続きが要る。 受付の開始時期や必要書類は金融機関ごとに違うので、自分の使っている会社で確かめるしかない。
「誰のお金か」を先に決める
子ども名義の口座に親の資金を入れることは、贈与にあたる。
贈与税の基礎控除は受け取る人ひとりにつき年110万円。 60万円はその内側に収まるが、他の贈与と合算して数える。 名義と資金の出どころ、管理する人が一致しない場合の扱いは、断定できない。
だから金額より先に、誰のお金として渡すのかを整理しておきたい。 埋める前に、決めることがあるのだ。
埋まらない、と分かって静かになった
枠は上限であって、ノルマではないのだ。
私は若い頃、株式投資で損失を出して一度退場した。 2020年の暴落のときはJ-REITに集中していて、大きな含み損を抱えた。 そこから分散へ移り、今は全世界株式のインデックスを軸にしている。
学んだのは、いくら入れたかより、止めなかったかどうかだった。 下がっても積立を続ける。 動かないと決めた日は、何もしない。
選択肢を残すための試算
埋まらないと分かったなら、次の問いは「いくら足すか」ではない。
足さないという選び方もある——そこまで含めて見えたとき、数字は指示ではなく材料になる。
経済的自由とは、大きな資産を持つことではなく、選択肢を持つことだった。 子どもの将来にも、同じことが言えるのではないだろうか。
まとめ
今日ひとつだけ、児童手当の入金額をそのまま12倍してみてほしい。
年でいくらか。枠のどのくらいか。 そこから先は、一般論ではなく自分の数字の話になる。
埋まらなくていい。 続けられる額を、自分で決められること。 それが手に入る、いちばん静かな安心かもしれない。

