はじめに
スーパーのレジで、金額を二度見した。 かごの中身は、先月とほとんど同じだ。 それなのに、合計だけが静かに増えている。
通帳の数字は減っていない。 減っているのは、その数字で買えるものだった。
2%が20年続くと、必要額は約1.5倍になる
年2%のインフレが20年続くと、物価はおよそ1.49倍になる。 つまり必要資産額も、ざっくり1.5倍だ。
今の暮らしに月25万円かかっているとする。 20年後の同じ暮らしは、約37万円。 年間300万円の生活費なら、約446万円になる計算だった。
取り崩し前提で年間支出の25倍を目安に置くなら、7500万円のゴールは1億1000万円あたりまで動く。 ゴールが逃げていくのではない。 最初から、そういう距離だったのだ。
「増えない」ではなく「目減りする」
現金は減らない。 額面はそのままだ。 だから危機感が持ちにくい。
けれど20年で、購買力はおよそ3分の1が消える。 100万円が、今の67万円分の買い物しかできなくなる。 これは、明細に一度も出てこない損失ではないだろうか。
数字は「実質」で置き直す
やることは、どちらか一方でいい。
・必要額のほうを1.5倍に引き上げる
・リターンのほうからインフレ分を引く
名目5%のリターンから2%を引けば、実質3%。 この実質で計算し直すと、到達年数の景色はかなり変わる。 甘い数字が消えるぶん、計画は静かになる。
現金を置く場所を変えた
私の生活防衛資金は1年分。 以前は普通預金に置いていた。 最近、その全額を個人向け国債(変動10年)へ移した。
理由は利回りではない。 額面が減らなくても、買えるものは減っていく——それが気になったからだ。
ただし国債は金利連動であって、インフレ連動ではない。 最低金利年0.05%が保証され、半年ごとに金利が見直される。 金利が上がる局面で置いていかれにくい、それだけだ。 物価に勝てるとは限らない。
増やす側は、止めない
若い頃、株で損を出して一度退場した。 コロナショックのときはJ-REITに集中していて、大きな含み損を抱えた。 そこから全世界株式の分散に軸を移した。
下げても売らない。 積立も止めない。 インフレに対抗しているのは、たぶん派手な対策ではなく、この「止めないこと」のほうかもしれない。
経済的自由は、倍率の先にある
経済的自由とは、決めた金額に届くことではなかった。 物価が1.5倍になった世界でも、まだ選択肢を持てる状態のことだった。
1.5という数字は重い。 それでも、知らずに走るよりずっといい。 知った瞬間から、増やす・減らす・働く期間を変える——手札が増えるのだ。
まとめ
今日ひとつだけ、今の年間生活費に1.5を掛けてみてほしい。 その数字に息が止まるなら、まだ動ける時間があるということだ。 静かに驚けるうちに知っておけたら、それでいい。

