はじめに
収入が止まった月の家計簿を、思い浮かべたことがあるだろうか。 最初に消すのは、たぶんコーヒー代。 次にサブスク、そのあと外食。 削っているのに、合計はほとんど動かない——そんな光景が浮かぶ。
減らす順番は、金額では決まらない
人は、罪悪感のある支出から先に減らしていく。 けれど家計を重くしているのは、毎月黙って出ていくお金のほうだ。 通信や保険のような固定費は、一度下げれば翌月も、その次の月も効き続ける。 基準にすべきは金額でも我慢でもなく、「止めたあと、戻すのにどれだけ手間がかかるか」ではないだろうか。 戻しにくいものほど、慎重に。 戻しやすいものから、先に。
最後まで残すのは、権利につながる支出
いちばん高くつくのは、払えないまま黙って放っておくことかもしれない。 国民年金の保険料は、未納のままだと受給資格期間にも年金額にも反映されない。障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格期間にも算入されない。 申請して全額免除が承認された期間は違う。受給資格期間に入り、年金額にも全額納めた場合の2分の1が反映される。 納付猶予は受給資格期間には入るが、年金額には反映されない。 失業などの事実が確認できたときは、前年の所得にかかわらず申請できる特例がある——日本年金機構はそう案内している。 あとから追納もできる。追納できるのは承認された月の前10年以内の期間で、1年分を納めると老後の年金は、全額免除の期間なら年およそ1万円、納付猶予や学生納付特例の期間なら年およそ2万円増える。
時間には期限がある
雇用保険の基本手当も、暮らしを止めないためのお金だ。 求職の申込みのあと、失業の状態にある7日間は支給されない。待期と呼ばれる期間だ。 所定給付日数は、離職時の年齢や被保険者であった期間、離職の理由などで決まる。 そして受給期間は、原則として離職した日の翌日から1年。 つまり、使える時間そのものに期限がある。 手続きを先延ばしにすると、日数は残っていても受け取れないことがあるのだ。
選択肢を持つために残すもの
物価が上がれば、額面が減らなくても同じ金額で買えるものは減っていく。 そう考えて、生活防衛資金を個人向け国債に移した。 金利が上がれば利率も追うが、物価に勝てるとは限らない。 しかも発行から一年は中途換金できない——備えなのに、すぐには動かせないのだ。 それでも一年分の備えがあるだけで、焦って投資を取り崩さずに済む。 経済的自由とは、増やした額のことではなく、選択肢を持っていられる状態のことかもしれない。
まとめ
最初に減らすのは、戻しやすい支出。 最後まで残すのは、将来受け取る権利につながる支出と、時間を買う手続きだ。 順番さえ決まっていれば、収入が止まった日にゼロから考えなくて済む。 今日ひとつだけ——もし来月収入が止まったら最後まで残す支出は何か、紙に一行だけ書き出してみてほしい。

