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お金を残すことと、お金を使い切ることの間にある選択肢

経済的自由

はじめに

通帳の残高を眺めながら、ふと手が止まる。 これは、いつ、誰のために使うお金なのか——。

使い切るのが正解だと言う人がいる。 残すのが親の務めだと言う人もいる。 どちらの言い分も分かるのに、聞くたび少し居心地が悪かった。

二択にしていたのは、自分の頭のほうだった

残すか、使い切るか。 そう並べた瞬間に、決められるのは死んだあとだけになる。 残高が減るのを待つか、増えたまま触れずにおくか——どちらも、時間の使いみちを手放している。

実家の資産をざっと足してみたことがある。 相続税の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の数。 足した額は、その線に届いていなかった。 だが、計算するまで分からなかったのだ。 分からないまま、重い話として避けていた。

生きているうちに渡す、という中間

二択の間には、制度が用意した道がある。 相続時精算課税は、原則60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子や孫へ贈与する場合に選べる制度だ。 令和6年1月1日以後の贈与には年110万円の基礎控除があり、それとは別に累計2,500万円の特別控除がある。 ただし特別控除を使えるのは、贈与税の期限内申告書を出した場合に限られる。

そして一度選ぶと、その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない。 戻れない道だということは、選ぶ前に知っておきたい。

制度が問うているのは、時期のほうだった

暦年課税にも時間の条件がある。 相続開始の日が令和8年12月31日までなら、加算されるのは相続開始前3年以内の贈与。 令和9年1月1日から令和12年12月31日までなら、令和6年1月1日から死亡の日までの分。 令和13年1月1日以後なら、相続開始前7年以内。 加算対象期間の中の贈与は、贈与税がかかったかどうかに関係なく足し戻される。

つまり制度が見ているのは、いくら渡すかではなく、いつ渡したかのほうなのだ。

選択肢を持つ、ということ

経済的自由を、私はずっと「働かなくていい状態」のことだと思っていた。 でも、選択肢を持つというのは、期限のあるものを期限の内側で選べることではないだろうか。

残すも使い切るも、締切の後ろでは選べない。 選べるのは、まだ元気で、数字を自分で数えられるうちだけだ。

まとめ

残すか使い切るか——問いは、渡す時期の話に変わった。 金額の正解は、たぶんどこにもない。 あるのは、いつ決めるかという一点だけ。

今日ひとつだけ、自分の資産をざっと足して、基礎控除の線のどちら側にいるのか確かめてみてほしい。 分かってから迷うのと、分からないまま避けるのとでは、同じ迷いでも重さが違う。

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