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個人事業主の小規模企業共済とiDeCo併用|控除の最大化と流動性の限界

経済的自由

はじめに

制度の一覧表では、控除という言葉だけが光って見える。

——それだけで、正解にたどり着いた気になる。

控除の枠で語られるのは、小規模企業共済とiDeCo。だが、その表には出口が書かれていないのだ。

控除の枠は、たしかに大きい

小規模企業共済は、掛金を月7万円まで積める。

iDeCoは第1号被保険者なら、いまは月6.8万円。2026年12月1日施行の改正で月7.5万円まで上がるが、掛金への反映は2027年1月引落分からだ。改正前も改正後も、国民年金基金・付加保険料との合算枠だ。

どちらの掛金も小規模企業共済等掛金控除に入り、それぞれ全額が課税所得から引かれる。所得が大きいほど、この二本立ては効く。

出口の日付は、入口よりずっと遠い

iDeCoは原則60歳まで引き出せない。しかも60歳までの通算加入者等期間が10年に満たないと、受給開始は段階的に後ろへずれ、期間がいちばん短ければ65歳だ。

この期間には企業型DCの加入者期間なども合算されるが、60歳を過ぎてからの期間は数えない。60歳以降に初めて加入した場合は、加入から5年後だ。

加入できるのはいま65歳未満まで、それも国民年金の被保険者であることが条件だ。2026年12月からは70歳未満に延び、その条件も外れる。

ただし枠は同じではない。個人事業主が60歳で国民年金の被保険者でなくなったあとの上限は月6.2万円で、7.5万円ではない。保険料の納付済期間が480か月に満たず、60歳から任意加入するなら、480か月に届くまでは7.5万円のままだ。原則どおり65歳から老齢基礎年金を受け取れば、拠出もそこで終わる。長く積めるぶん出口は後ろへ動き、入口の枠は資格で縮む。

小規模企業共済は任意解約できるが、掛金納付月数が240か月に満たないうちに解約すると解約手当金は掛金の合計を下回る。12か月未満なら出ない。

節税の枠は毎年更新されるが、暮らしの資金は毎日必要だ。

出口は、受け取る順番でも変わる

廃業や老齢給付で受け取る共済金も、iDeCoの一時金も、一括なら税法上は退職所得だ。同じ年に重なれば合算される。年をずらしても、前の受け取りから一定の期間内なら、あとの退職所得控除は掛けていた期間が重なる分だけ削られる。

その期間は、順番で違う。iDeCoの一時金が先で、これから共済金を受け取るなら前年以前9年内。共済金が先でiDeCoの一時金があとなら、前年以前19年内。iDeCoを70歳まで積むなら、共済金のほうが先に来やすい。19年内から外れるには、共済金から20年おいてiDeCoを受け取ることになる。iDeCoの受け取りは遅くとも75歳だから、共済金を受け取るのが五十代後半以降なら、まず避けられない。

順番と間隔しだいで、足し算は引き算になる。

限界を、少しだけ緩めるもの

小規模企業共済には契約者貸付がある。ただし一般貸付なら、借りられるのは納めた掛金の7〜9割まで、利息は年1.5%。

条件は12か月以上納め、限度額が10万円に達していること。判定は年2回。引き出しではなく、借入だ。

事業を続けたままでも、65歳以上で180か月以上納めていれば、老齢給付として請求できる。一方、任意解約で受け取る解約手当金は、解約時に65歳未満なら一時所得、65歳以上なら退職所得。出口の年齢で、税の区分が変わる。

流動性はゼロではない。条件つきで開くだけで、その条件は今わかる。

動かせるお金が、掛金の上限を決める

私の生活防衛資金は1年分だ。最近、その全額を個人向け国債(変動10年)に移した。理由は物価上昇——額面が減らなくても、同じ金額で買えるものは減っていく。もっとも、変動10年が追うのは金利であって物価ではない。

この置き場所にも制約はある。発行から1年は原則として中途換金できず、換金時は直前2回分の各利子(税引前)相当額×0.79685が差し引かれる。

一年分の備えが、最初の一年は動かない。守りの資金にも、置いた日から出口の日付がある。

だからこそ、掛金の上限を決めるのは、控除の額ではなく、手元でいつ動かせるかのほうではないだろうか。

ただ、引き出せないことは機能でもある。いつでも取り崩せる口座は、暴落のたびに取り崩す口座だ。生活防衛資金を先に確保して、その外側で積むなら、控除と流動性は両立する。ただし、その外側がどこから始まるかは、積んだお金がいつ動くかを見積もらないと決まらない。

その見積もりを間違えたとき、あとから下げればいいとは限らない。共済の掛金を下げると、下げた分はそこで月数が止まり、低い支給率のまま据え置かれる。解約するなら、契約が240か月を超えても元本割れは起こりうる。iDeCoの掛金額を変えられるのは、12月分から翌年11月分までのあいだに一度きりだ。収入が細ってから下げても、次に変えられるのは次の12月分からだ。拠出そのものを止めて運用指図者になる道はあるが、そのときは控除もなくなる。

経済的自由は、控除の合計ではなかった

減った税額は年に一度わかる。個人事業主が毎月直面するのは、収入が細った月に何を取り崩せるかだ。

経済的自由とは、増やした額ではなく選択肢を持っていることだと思う。引き出せないお金は、将来の自分の味方になる代わりに、今の自分の選択肢をひとつ減らす。その交換に納得できているかどうか。決め手はそこにある。

まとめ

控除は埋めるほど正しく見える。けれど根拠は、税率ではなく自分の資金繰りの側にある。

今日ひとつだけ。制度の上限ではなく、出口の日付を紙に書き出してみてほしい。

何歳で、何か月で、そのお金は動くのか。

それが書けたとき、埋める枠の大きさは、たぶん自分で決められる。

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