はじめに
「自由になったら、何をしたいの?」
そう聞かれて、言葉に詰まった。
旅でも移住でもない。 積み立てているのに、その先の絵が浮かばない。
目的も無いのに増やして意味があるのか——そんな後ろめたさが、静かに残った。
目的が先、という思い込み
資産形成の話は、たいてい目標額から始まる。 何年後にいくら、そのために毎月いくら。
逆算は気持ちがいい。 だが、逆算には出発点として「やりたいこと」が要る。
それが無い人は、入口で立ち止まってしまうのだ。
私も長いあいだ、目的が決まらないことを準備不足だと思っていた。 本当は、順番が逆だったのかもしれない。
決めなくても済むように、制度はできている
調べてみると、いまの制度はむしろ「決めない」ことに寛容だった。
2024年からのNISAは非課税保有期間が無期限になり、口座開設期間も恒久化された。 いつまでに使い切る、という締め切りが無い。
- 売却すれば、その商品の簿価ぶんの枠が翌年以降に復活する
- 買い直しには、その年の年間投資枠を使う
- 生涯の非課税保有限度額は1,800万円、うち成長投資枠は1,200万円
- つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円は併用できる
出口を一度決めたら戻れない設計ではない。
iDeCoはもう少し不自由で、老齢給付金は原則60歳から。 通算加入者等期間が10年に満たなければ、受給開始は61歳、62歳と後ろへずれる。
それでも受取方法は、一時金・5年以上20年以下の有期年金・その組み合わせから選べる。
決めるのは、その時が近づいてからでいい。
貯めているのは、お金ではなく余白
私が若い頃に投資で失敗し、一度退場したのは、何を目指していたのか自分でも曖昧なままだった。
目的が無いから続かなかったのではない。 続けられる形になっていなかったのだ。
いまは全世界株式のインデックスを積み立てている。 生活防衛資金は1年分を個人向け国債(変動10年)に置いた。
額面は守られるが、物価に勝てるとは限らない。 それでも、暮らしが止まらない土台にはなる。
この二つがあると、日々の判断が軽くなる。 何かを選び直したくなったとき、金銭を理由に諦めなくて済む。
経済的自由とは、選択肢を持つこと
経済的自由は、何かを成し遂げるための資金ではない。
選択肢を持っている状態そのものではないだろうか。
- やめる
- 休む
- 続ける
どれも選べるなら、目的は後から決めればいい。
目的が無いのではなく、まだ決めていないだけだった。
まとめ
夢を語れないことは、積立をやめる理由にならない。
決めなくていい設計の上に積んでいけば、決める力のほうが後から育つ。
今日ひとつだけ——「何のために」を空欄のまま、積立の設定画面を閉じてみてほしい。
その空欄は、いつか自分で埋められる。

