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相続する人が困らない資産管理|家族に伝えておくべきお金の情報

経済的自由

はじめに

夜、通帳とネット証券のログイン画面を並べて眺めていた。

自分にしか分からない場所に、お金が散らばっている。

もし明日、私がいなくなったら——家族はこれをどうやって見つけるのだろう。

そう思った瞬間、背中が少しだけ冷たくなった。

残された人を最初に追いかけるのは、期限

相続の手続きには期限がある。

相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内。申告書の提出先は、亡くなった人の住所地を所轄する税務署だ。相続人の住所地ではない。

さらに早いのが準確定申告。その年の1月1日から死亡の日までの所得を計算し、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をする。

気持ちの整理もつかないうちに、この時計は動き出している。

数えるまでは、分からない

相続税がかかるかどうかは、課税価格の合計額から基礎控除額を引いて決まる。

基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数。この人数は、相続を放棄した人がいても、放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数える。

取得した財産の価額の合計が基礎控除額の範囲内なら、申告も納税も必要ない。

私も実家の資産をざっと足してみたことがある。超えてはいなかった。だが、計算するまで分からなかったのだ。

分からないまま10か月を過ごすのと、先に一度数えてあるのとでは、家族の消耗がまるで違う。

分けられないと、使えない制度がある

配偶者には税額の軽減がある。遺産分割や遺贈で実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかからない。

ただし、申告期限までに分割されていない財産はこの軽減の対象にならない。申告書に分割見込書を添えて後から分割すれば対象にできる道は残されているが、そこまで家族が知っているとは限らない。

制度は待ってくれる。でも、知らなければ使えない。

見つけてもらえない資産

年金にも請求がいる。

まだ受け取っていない年金や、亡くなった月分までの年金は、未支給年金として生計を同じくしていた遺族が受け取れる。受け取れる人の順位は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹と決まっていて、請求書を出して初めて手続きが進む。

預金も似ている。2009年1月1日以降の取引から10年以上その後の取引のない預金等は、休眠預金等として民間公益活動に活用される。ただし消えるわけではない。引き出す期限はなく、預金者が亡くなっていれば、所定の手続きを経て相続人が引き出せる。

それでも——口座の存在を誰も知らなければ、手続きは始まらない。

伝えるべきなのは、金額ではなかった

私は長いあいだ、家族に資産額を伝えるべきかどうかで迷っていた。

でも、困るのは金額を知らないことではない。どこに、何が、いくつあるのか。その地図がないことだった。

金融機関の名前。口座の種類。証券口座の有無。年金を受けているかどうか。それだけで、家族は動き出せる。

経済的自由とは、自分の時間の使い道を自分で決められる状態のことだと思ってきた。けれど、遺された人が慌てずに決められることも、同じ自由の一部ではないだろうか。

選択肢を持つのは、私だけでなくていい。

まとめ

資産を増やす努力は、見つけてもらえて初めて意味を持つ。

期限は向こうからやってくる。数えていなければ、家族はそれを数えるところから始めることになる。

今日ひとつだけ——使っている金融機関の名前を、紙に書き出してみてほしい。

残高はいらない。名前だけでいい。それが、いちばん短い地図になる。

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