はじめに
全世界株式の国別比率を見る。 米国が六割を超える——。 2026年8月末のMSCI ACWIで、そうなっている。 全世界に分散しているつもりでも、実際はひとつの国に大きく寄っている。 時価総額加重という仕組みが、そう作っているのだ。
上がったものが、自動的に重くなる
時価総額加重は、市場が値付けした大きさをそのまま比率にする。 実際には浮動株調整後の時価総額——おおむね市場で自由に売買できる分だけを数えた値だ。 だから株価が上がった銘柄ほど、指数の中で重くなっていく。 高くなったものを多く持ち、まだ小さい芽は薄く持つ。 これは弱点として語られる。
「偏っている」という言葉は、私には刺さる。 かつてJ-REITに集中していて、コロナショックで大きな含み損を抱えた。 全世界株式へ移ったのは、そのあとだ。 あれは自分の判断で作った偏りで、市場の値付けが作る偏りとは出どころも度合いも違う。 それでも、偏りがどれだけ効くかは、あのとき身をもって知った。
裾野を広げた側が、勝つとは限らなかった
では、裾野の小型株まで拾ったほうが良かったのか。 調べた限りでは、広いほうが上とは限らなかった。
同じ提供元の指数の中で、小型株を含まないMSCI ACWIと、小型株まで含むMSCI ACWI IMIを並べる。 ACWI IMIも同じ時価総額加重で、同じ2026年8月末で見ても米国の比率は大きく変わらない。 裾野は埋まるが、米国偏重は埋まらない。
米ドル建て・配当への現地源泉税控除後(Net)、2026年8月末時点の過去10年の年率は、ACWIが12.58%、ACWI IMIが12.29%。 差は0.29ポイントで、小型まで含む側がわずかに下だった。 同じ米ドル建て・Netで、窓を変えて2012〜2025年の暦年リターンをつないで年率を出すと(自前の計算)、ACWIが11.15%、ACWI IMIが11.01%だった。
ここで比べられるのは、裾野を広げた側が勝ったかどうかまでだ。 米国偏重そのものに、これらの数字は答えていない。
これは指数どうしの差であって、ファンドの成績ではない。 10年は月次の基準日、14年は暦年で、基準も窓もそろっていないうえ、期間の大半は重なっている。 だから「長く持てば差は縮む」とは言えず、並べて見るだけだ。 そして、これは過去の実績であって、次にどちらが前に出るかは分からない。
私が積み立てているファンドでいえば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はMSCI ACWIに連動する。 SBI・全世界株式インデックス・ファンドは、FTSE Global All Capに連動する。 後者は小型株を含むが、ACWI IMIとは小型株の線引きも韓国の分類も違う。 上の比較は、小型株の効果を近似する目的で並べたにすぎない。
裾野を広げた側が勝つとは決まっていなかった。
決めないことを、決めた
どちらの裾野が前に出るかを事前に選べない。だから私は、選ばない形にした。 選ばない形とは、指数の中の比率を自分で決めないということだ。 時価総額加重は、誰かの相場観ではなく市場の値付けが比率を決める。 自分の判断を入れる余地がないことが、偏りで傷んだ私には合っていた。
資産は株式と安全資産の二層にしてある。 指数の中身は市場に任せ、暮らしを支える分は安全資産の側に置く。 当てにいかない形でいられるのは、その層があるからだ。
まとめ
時価総額加重は、最適な形とは限らない。 ただ、最適を当てにいかなくても続けられる形だった。 弱点を知っても手放さなかったのは、勝てると思ったからではない。 外しても暮らしが崩れないと思えたからだ。
経済的自由とは、正解を当てる力のことではないのかもしれない。 当てられなくても続けられる——その状態こそが、選択肢を持つということなのだ。
今日ひとつだけ、確かめてみてほしい。 自分が持つ全世界株式の国別比率を、月次レポートで開いてみる。 その比率を決めたのは、自分ではない。

