はじめに
証券口座の保有一覧を開いたら、似た名前が縦に並んでいた。 全世界、先進国、米国、高配当——。 どれも悪くなさそうで、そのつど少しずつ買い足した結果だった。 分散したつもりでいた。 けれど増えていたのは、投資先ではなく行数のほうだったかもしれない。
本数は分散の量ではない
インデックスファンドは、一本の中にすでに多くの企業を抱えている。 全世界株式のインデックスを持っているなら、米国の大型株もその中に入っている。 そこへ米国株のファンドを足しても、新しい投資先が増えるわけではない。 増えるのは、すでに持っている企業の比率だ。 似た指数を追う商品を並べても、中で買われている株は大きく重なる。 重なった部分は、二度数えても一度分にしかならないのだ。
選べる幅を、持つ量と取り違える
金融庁が公表しているつみたて投資枠の対象商品は、2026年4月30日時点で353本ある。 これは選べる幅が広いという話であって、たくさん買いなさいという話ではない。 けれど一覧を眺めていると、選ぶことと買うことの境目がぼやけてくる。 迷った末に、どちらも買って安心する——その手つきに覚えがないだろうか。
増やした本数は、売るときに効いてくる
NISA口座は、一人につき一口座だけ。 そしてNISA口座の中で売って損が出ても、その損はないものとみなされる。 課税口座の利益と相殺することも、翌年以降に繰り越すこともできない。 売った分の非課税枠は取得金額の分だけ戻ってくるが、使えるのは翌年以降だ。買い直しには、その年の年間投資枠を使う。 調子の悪いものを売って入れ替える、という調整は思っているより軽くない。 増やすのは一瞬で、整理には時間がかかる。
管理できる範囲が、続けられる範囲
年に一度、資産の比率を確かめる日を決めている。 そのとき数えるものが多いほど、点検は後回しになりやすい。 一目で見えていた配分が、スクロールしないと分からなくなる。 残高を開くのが億劫になった時点で、その配分はもう運用されていない。 続けられない形は、成績以前の問題ではないだろうか。
本数ではなく、中身で数える
若い頃の失敗のあと、集中をやめて全世界株式のインデックスへ移した。 いま積み立てているのは、その一本だけだ。 物足りなく見える日もある。 それでも、何を持っているかを自分の言葉で説明できる状態は、想像以上に静かだった。 経済的自由へ向かう途中で効いてくるのは、抱えた本数ではなく、迷わず続けられる形のほうかもしれない。 選択肢を持つとは、商品を増やすことではなかったのだ。
まとめ
分散は、並んだ行数では測れない。 測れるのは、中身が重なっていないかどうかだけ。 今日ひとつだけ——持っているファンドが何に連動しているかを、書き出してみてほしい。 重なりが見えたとき、減らすという選択肢がはじめて現れる。

