はじめに
定年まで、と言われて働き続ける人がいる。 辞める日を先に決めて、そこから逆算する人もいる。
辞めたあとに何が、いつ、いくら届くのか。知らないままでは進めない。 公務員には、老齢基礎年金と老齢厚生年金のほかに、受け取るものがふたつある。 退職手当と、年金払い退職給付だ。
同じ「辞めたあとのお金」でも、届く時期が違う
退職手当は、辞めたあとに受け取る一時金。 年金払い退職給付は原則65歳から。半分が終身、残り半分が有期だ。 老齢厚生年金も、原則65歳からだ。
届くのが遅いお金は、辞めた直後の家計を支えない。 五十代で辞めるなら、65歳までは自分で埋める。 その退職手当も、早期退職募集制度で認められれば自己都合より増える。
一時金の税は、ほかの所得と切り離されている
退職一時金は退職所得として、他の所得と分けて計算される。 だから一時金で受け取るかぎり、その年にほかの種類の所得が重なっても、退職所得の税額は動かない。
変わるのは、年金の形で受け取ったときだ。 公的年金等の雑所得となり、他の所得と合算され、翌年の国民健康保険料などの算定にも入る。
遅いお金にも、動かせる余地はある
年金払い退職給付は、待つだけのお金ではない。 退職していて組合員期間が1年以上あれば、60歳から65歳になる日の前日までのあいだで繰り上げて受け取れる。終身の部分と有期の部分は同時に請求する。 ただし繰り上げれば年額は減る。
有期の部分は原則20年。 給付事由が生じてから6か月以内に、退職年金の請求と同時に申し出れば、10年にも一時金にもできる。 その6か月を過ぎれば、そのまま20年で確定する。
税の上では、順番が金額より効くことがある
退職所得控除には重複調整がある。二度目に受け取るとき、前に受け取った分と期間が重なっていれば、その分だけ控除が削られる。 判定の窓が何年さかのぼるかは、先に受け取ったものと、あとから受け取るものの組み合わせで決まる。
確定拠出年金の老齢一時金が先で退職手当等があとなら、その窓は前年以前4年内から9年内に延びた。両方を令和8年(2026年)1月1日以後に受け取っているときだ。
五十代で辞めるなら、先に届くのは退職手当のほうだ。 そのあとに確定拠出年金の一時金を受け取るなら、前年以前19年内。ここは変わっていない。
ただし有期退職年金に代わる一時金は、この数え方の手前でつまずくことがある。 何年の所得になるかは受け取った年ではなく、最後に組合員でなくなったときに退職手当等を受けたかどうかで決まる。受けていれば、課税は退職した年。 時期をずらしても、退職手当と同じ年に合算される。
順番が効く場面と、効かない場面がある。
制度の中の枠には、制度の都合がついてくる
受け取る側は順番に縛られる。積む側の枠は広がる。法律は別だが、同じ時期の改正だ。 2026年12月1日施行の改正で、iDeCoの拠出限度額の共通枠は月6.2万円になる。 ただし公務員が使えるのは、6.2万円から共済掛金相当額8,000円を引いた月5.4万円。今の2万円からは大きく広がる。掛金への反映は2027年1月引落分から。 これは在職中の枠で、辞めれば別の区分の枠になる。
ただしこの器から引き出せるのは早くても60歳。通算加入者等期間が10年に満たなければ、さらに後ろへずれる。 少なくとも60歳までの空白は、この器では埋められない。
これは公務員に限らない。 私の生活防衛資金は一年分で、最近その全額を個人向け国債(変動10年)へ移した。 個人向け国債は、発行から1年は中途換金できない。 一年分の備えが、一年は動かせない。 どの器にも、使えるようになる時期がついてくる。
経済的自由とは、時期のずれを埋める力かもしれない
辞められない理由は、たいてい金額ではない。 「65歳まで、何で暮らすのか」に答えられないことのほうだ。
経済的自由とは、収入がゼロでも生きられる状態だけではないと思う。 年金が届くまでの空白を、自分の手持ちで埋められること。 その余白があるとき、人ははじめて選択肢を持つのではないだろうか。
まとめ
制度は、辞めたい日に合わせて動いてはくれない。 けれど、いつ何が届くかは、今日でも調べられる。
今日ひとつだけ、辞めたい年齢と65歳のあいだが何年あるかを数えてみてほしい。 その年数が、いま埋めるべき空白の長さだ。 何をいつ受け取るかを決めるのは、長さを知ったあとでいい。

