はじめに
証券会社の画面を開いたまま、しばらく指が止まった夜がある。
子ども名義でも非課税で積める制度が始まる——そう目にしたときだった。
待って非課税で積むか、それまでのあいだ課税口座で積んでおくか。
正解が分からないまま、その日は何もせずに画面を閉じた。
「まだ決まっていない」は、もう終わっている
先に事実を置いておきたい。
こどもNISAは、2025年12月の税制改正大綱で骨格が示され、2026年3月末に税制改正法が成立している。開始は2027年1月。「始まるらしい」という段階は、もう過ぎた。
・対象は0〜17歳
・年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円
・買えるのはつみたて投資枠の対象商品(定時・定額の積立)
・非課税で持てる期間は無期限。18歳になると、手続きなしで成人のつみたて投資枠へ移る
・原則として払い出せない。ただし12歳以降は、使いみちが子ども本人のためであることなど一定の要件を満たせば払い出せる
ジュニアNISAを使っていた家庭でも、そのまま引き継がれるわけではない。新しく口座を開く手続きがいる。
口座開設の受付を2026年の秋から始めると案内している金融機関もある。ただし受付時期も必要書類も会社ごとに違うので、そこは自分の使っている証券会社で確かめるしかない。
待ち時間は、もう数えられる
制度を待つのは、何もしていないように見えて「その期間、市場に置かない」という選択をしている。
これは今も正しい。ただし今回、待つ期間は年単位ではない。開始まで数か月だ。
数か月分の相場は、上にも下にも動く。そこで生まれる差は、どちらに転んでも判断をひっくり返すほどの大きさにならない。
一方で、あとから移す手間は確実に残る。
・課税口座からNISAへ、そのまま移すことはできない
・いったん売却し、含み益があれば20.315%が引かれる
・買い直しには、その年の年間投資枠(60万円)を使う
数か月だけ特定口座で積んで、開始と同時に移し替える——これは得より後始末のほうが大きくなりやすい。長く課税口座で持ち続ける前提なら話は別だが、それはもう「待つか始めるか」の話ではない。
決まっていない部分だけを、考える
私は若い頃、期待だけで一つの方向に賭けて、市場から退場したことがある。その後もJ-REITに偏らせたまま2020年の急落に遭い、大きな含み損を抱えた。
賭けていたのは、決まっていないことだった。
だから今回のように中身が決まっている制度なら、悩む場所はもっと狭くていい。決まっているものは調べれば済む。考えるべきなのは、決まっていない部分——いくら積むか、いつまで続けるか、そのお金を何に使うのか——のほうだ。
なお、子ども名義の口座に親のお金を入れれば、それは贈与になる。基礎控除は受け取る側ひとりにつき年110万円。年60万円の枠はその内側に収まるが、他の贈与と合わせて数える点は変わらない。
そして名義だけ子どもで、実質は親が自分のお金として動かし続けるなら、それは子どもの資産とは呼びにくくなる。誰のお金として渡すのか。ここは制度が始まる前に整理しておきたい。
まとめ
待つあいだにできることは、思ったより多い。
だから今日はひとつだけ——使っている証券会社のこどもNISAの案内を開いて、未成年の口座がいつから開けるのかを確かめてみてほしい。
制度がいつ始まるかは選べない。 でも、始まった日に動けるかどうかは選べる。

