はじめに
夫婦の資産の話をするとき、いつも「二人で」と数えていた。
生活費も、投資の金額も、二人分。
でも、ある日ふと思ったのだ——この家計は、どちらかが先にいなくなった日から、まったく別の形になるのではないだろうか。
二人分の半分には、ならない
残された側の暮らしは、二人分の半分にはならない。
住まいの費用も、光熱費の基本料金も、人数では割り切れないからだ。
そして入ってくるお金のほうは、確実に減る。
減り方が、どちらが残るかで変わる——そこを見ていなかった。
上乗せは、思ったより小さいことがある
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。
ただし65歳以上で自分にも老齢厚生年金がある場合、自分の老齢厚生年金は全額支給され、遺族厚生年金はそれに相当する額が支給停止になる。
つまり、双方が長く厚生年金に入っていた夫婦ほど、上乗せは小さくなる。
「4分の3が丸ごと足される」と思っていると、見込みがずれるのだ。
条件つきの制度を、条件ごと知る
子のいない妻には中高齢寡婦加算がある。
夫の死亡時に40歳以上65歳未満であることが条件で、年額635,500円。
ただし夫が老齢厚生年金の受給権者などであった場合は、厚生年金の加入期間20年以上が要る。
夫の側はさらに狭い。
子のない夫が遺族厚生年金を受けられるのは、妻の死亡時に55歳以上だった場合に限られ、受給開始は60歳から。
2028年4月施行の見直しでは、子のない60歳未満の配偶者が原則5年の有期給付になる一方、額は有期給付加算で約1.3倍になり、障害の状態にある人や収入が十分でない人には継続給付がある。
男性側は、これまで対象外だった60歳未満の人が新たに加わる。
狭まる人と、広がる人が同時にいる。
年金だけの話では終わらない
お金の受け渡しにも順番がある。
配偶者の税額軽減では、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が1億6千万円か法定相続分相当額のどちらか多い額までは相続税がかからない。
ただし、申告期限までに分割されていない財産は対象外だ。
さらに、続けて相続が起きたときには相次相続控除がある。
前回課された相続税額を、1年につき10パーセントずつ逓減させた額を差し引く仕組み。
夫婦の相続は、二度続けて起きる可能性が高い——そのことを、制度のほうは想定している。
経済的自由は、残る側にも要る
私は資産を株式と安全資産の二層で持ち、生活防衛資金は1年分を個人向け国債に置いている。
額面は守られるが、物価に勝てるとは限らない。
それでも、暮らしを止めない器は要る。
経済的自由とは、稼がなくてよくなることではなく、どちらが残っても選択肢が残っている状態のことかもしれない。
二人で自由だったものが、一人になった途端に不自由になるなら、それは半分しか設計できていなかったということだ。
まとめ
夫婦の設計は、二人でいくらではなく、残る側からいくら、で見直すと形が変わる。
制度は条件つきで、条件は世帯ごとに違う。
だから一般論ではなく、自分の数字で確かめるしかない。
今日ひとつだけ——どちらが残っても暮らしが続くか、そのときの収入の見込みを書き出してみてほしい。

