はじめに
残高を眺めて、あと何年でいくらになるかを逆算する。
足りない気がして、もっと利回りの高いものを探し始める——。
50代に入ると、その計算が頭から離れにくくなるのではないだろうか。
私も若い頃、株式投資で損を出して一度退場した。
あのとき苦しかったのは、損そのものよりも「取り返さなければ」という気持ちのほうだった。
取り返そうとすると、時間が敵になる
取り返そうとした瞬間、時間は味方から敵に変わる。
遅れを取り戻すための投資は、たいてい期限つきになるからだ。
期限があるほど、下がったときに待てなくなる。
私はいま、全世界株式のインデックスを積み立てている。
下げても止めないと決めているのは、意志が強いからではない。
期限を置いていないから、待てるだけなのだ。
増やす以外の手が、50代には残っている
50代の武器は、利回りではなく制度の使い方かもしれない。
老齢年金は原則65歳から。だが66歳以後75歳までの間で繰り下げれば、0.7%×繰り下げた月数だけ増える。
日本年金機構の早見表では、70歳まで繰り下げた場合の増額率は42.0%。この増額率は一生変わらない。
しかも老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらか一方だけを繰り下げることもできる。
逆に60歳からの繰り上げは、0.4%×前倒しした月数だけ減り、こちらも減額は生涯続く。請求の取り消しもできない。
増やすのではなく、受け取り方を決める。それも立派な一手だった。
「いつ出せるか」を先に確かめる
iDeCoの老齢給付金は原則60歳からだが、60歳時点で通算加入者等期間が10年に満たないと開始が後ろへずれる。
8年以上10年未満なら61歳、4年以上6年未満なら63歳という具合に。
60歳以降に初めて加入した場合は、加入から5年経過後。
NISAは売却した分の枠が、簿価ベースで翌年以降に復活する。買い直しには、その年の年間投資枠を使う。
入口の話ばかり見ていると、出口の条件は意外と見落としやすい。
経済的自由は、追いつくことではなかった
経済的自由とは、誰かの平均に追いつくことではない。
手元の条件のなかで、選択肢を持っていることだった。
年金をいつ受け取るか。どこから先に取り崩すか。働き方を少しだけ変えるか。
選べる余地がある限り、遅れているという感覚は薄れていく。
まとめ
足りないのは資産額ではなく、受け取り方を決めていないことかもしれない。
焦りは利回りでは埋まらない。埋まるのは、順番を決めたときだった。
今日ひとつだけ——年金を何歳から受け取るつもりか、紙に書いてみてほしい。
数字を増やす前に、決められることがまだ残っている。

