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資産形成を続ける人が、一度は「投資をやめる理由」を考えておく

経済的自由

はじめに

続ける理由なら、いくらでも書ける。 複利、分散、長い時間——。

でも「どうなったらやめるのか」を、私は一行も書いていなかった。

下落の日に手が止まるのは、続ける理由が足りないからではない。 終わり方を決めていないからかもしれない。

「やめる」には二種類ある

やめる、という言葉には別のものが混ざっている。

  • 積立を止める(買うのをやめる)
  • 保有を売る(持つのをやめる)
  • 口座ごと閉じる

この三つは、必要になる場面がまったく違う。 混ぜたまま考えるから、「怖いから全部やめる」に流れてしまうのだ。

私は若い頃、株式投資で失敗して損失を出し、一度退場した。 あれは自分で決めた終わりではなかった。 相場に、やめさせられただけだった。

条件を先に書いておく

やめる理由を、相場の側に置かない。 暮らしの側に置く。

  • 生活防衛資金を取り崩し始めたとき
  • 積立の目的だった期日が来たとき
  • お金の値動きが、日々の判断を曇らせているとき

どれも株価とは関係がない。 だから、下がっている日でも同じ答えが出る。

私の生活防衛資金は一年分で、いまは個人向け国債(変動10年)に置いている。 額面は守られるし、金利が上がれば利率も追う。 ただし物価に勝てるとは限らないし、発行から一年は中途換金できない。 備えなのに、すぐには動かせないのだ。

売るときに効いてくる仕様

条件を書くなら、制度の側も一度だけ確かめておきたい。

NISA口座で売って生じた損失は、ないものとみなされる。 課税口座の譲渡益や配当との損益通算も、繰越控除もできない。 一方で課税口座の譲渡損失は、確定申告をすれば申告分離課税を選んだ配当所得等と通算でき、控除しきれない分は翌年以後三年間くり越せる。

売った分の非課税枠は、簿価で翌年以降に戻ってくる。買い直しには、その年の年間投資枠を使う。 つまり、売って買い直すなら年をまたぐ。

iDeCoは事情が違う。 老齢給付金は原則60歳からで、通算加入者等期間が10年に満たなければ受給開始が段階的に後ろへずれる。 やめたくても、出口は自分で選べない。

終わりを決めておくと、続けやすい

不思議なもので、やめる条件を書くほど、途中でやめなくなる。

「この条件に当たっていないなら、今日は何もしない」 判断が、その一行で終わるからだ。

経済的自由とは、増やし続けることではないのかもしれない。 続ける自由と、やめる自由を、両方とも自分の手元に置いておくこと。 選択肢を持つというのは、たぶんそういうことだ。

まとめ

やめる条件を持たない人は、相場にやめさせられる。 書いておいた人は、自分の暮らしの都合でやめられる。

その紙は、おそらく一生使わない。 それでも、下がった夜の静けさが変わる。

今日ひとつだけ——「どうなったら、私は投資をやめるのか」を、一行だけ書いてみてほしい。

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