はじめに
証券口座の検索画面に、よく似た名前の投資信託が二つ並んでいた。
どちらも「全世界株式」。 片方はMSCI、もう片方はFTSE。
——いま、私はどちらも持っている。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と、SBI・全世界株式インデックス・ファンド。 前者はMSCIの指数に、後者はFTSEの指数に連動する。
では、その違いは資産額にどれだけ効くのか。
二つの指数は、どこが違うのか
数字で見る(いずれも2026年8月末)。
・MSCI ACWIは大型株と中型株が中心。構成銘柄は約2,460で、世界の投資可能な株式を時価総額でみて85%ほど覆う ・FTSE Global All Capは小型株まで含む。構成銘柄は約10,100で、数でいえば4倍を超える ・韓国の分類も違う。FTSEは先進国、MSCIは新興国に置いている
ただし韓国は、どちらの指数にも入っている。棚が違うだけだ。 効くのは先進国と新興国を分けて買う人で、全世界を1本で買う人の中身は変わらない。
では、小型株を足すと金額でどれだけ変わるのか。
FTSEは地域ごとの母集団を時価総額で並べて足切りする方式で、MSCIの85%とは測る土台が違う。 二つを引き算することはできない。
同じMSCIの中で実額を見る。 大型と中型のACWIが104.0兆ドル、小型まで含むACWI IMIが116.6兆ドル。 小型株の帯は12.6兆ドル——小型まで含めた全体の約11%だった。
指数の差は、どれだけだったか
小型株の効果を近似する目的で、同じMSCIの指数どうしを比べる。 米ドル建て、配当は現地の源泉税を引いたあと。
2026年8月末までの10年の年率は、ACWIが12.58%、ACWI IMIが12.29%。 差は0.29ポイントだった。
窓を変えて、2025年12月末までの14年分——2012年からの暦年の年次リターンをつなぐと、11.15%と11.01%。 同じ米ドル建て・源泉税控除後で、差は0.14ポイントだった。
ただしACWI IMIは、FTSE Global All Capとは小型株の線引きも韓国の分類も違う。 厳密な代役ではない。
信託報酬は、この二本ならどうか
私が持つ二本の信託報酬は、年0.05775%と年0.0682%。
ただし後者はETFを通して買う形なので、目論見書のこの数字だけでは足りない。 投資先ETFの分およそ0.034%を足して、年0.1022%程度になる。
差は0.044ポイント。安いのはオルカンのほうだ。
小型株の有無でみた指数の差0.29ポイントより小さい。
ただし性質が違う。 0.044ポイントは向きが決まっていて、毎年確実に引かれる。 0.29ポイントは過去10年の実績で、窓を変えると0.14だった。基準が違うので入れ子ではない。次にどちらへ出るかは分からない。
小さいほうだけが、先に決められる項目だった。
二本持っていても、増えるのは小型株の帯だけ
二本が抱えているのは、どちらも世界の大型株と中型株が中心だ。 FTSE側にだけ、その先の小型株が乗っている。
二本に分けたところで、別の市場が増えるわけではない。 増えるのは、確認する項目のほうだ。
コストの理屈は、安いほうへ寄せろと言う。 続けられる形という理屈は、動かすなと言う。 私はいま、二本とも持っている。
続けられる形で持っておく
経済的自由は、正解を当てることではないのだと思う。
指数のどちらを選んでも、効くのは続けられるかどうかのほうだ。 続けられる金額で積み、市場が下がっても売らずにいられる。 その状態こそが、選択肢を持つということではないだろうか。
比較表を開いている時間は、たしかに気持ちがいい。 何かを進めている感じがするからだ。 けれど積立の設定画面のほうは、その間ずっと同じ数字で止まっている。
安心の正体は、最適な指数ではなかった。
まとめ
20年をそろえた比較は、結局つくれなかった。 年次リターンが14年分しかなく、設定来の年率は起点が違うからだ——ACWIは2000年12月末、ACWI IMIは1994年5月末。
だから今日ひとつだけ。 自分が積んでいる商品の目論見書を開いて、連動している指数の名前と信託報酬を確かめてみてほしい。 別のファンドを通して買う形なら、その先の経費率も足す。
20年後にどちらが上かは、誰にも分からない。 分かるのは、確かめていない項目をひとつ減らしたという事実のほうだ。

