はじめに
インデックス投資を考えるとき、必ず話題になるのが「全世界株式と米国株、どちらに投資すべきか」という問いです。過去20年間のリターンを比較すると、明確な差が出ているのも事実です。しかし、数字だけを見て判断してよいのでしょうか。本記事では、両者の違いを整理しながら、投資家としてどう向き合うべきかを考えます。
全世界株式と米国株のリターン比較
過去20年間(2003年〜2023年)のデータで見ると、米国株(S&P500)は年平均リターンがおよそ9〜10%。一方、全世界株式(MSCI ACWI)は6〜7%程度にとどまります。長期で見れば米国株の成績が大きく上回っていることは否定できません。
実際、1,000万円を20年間運用した場合、米国株では約6,000万円、全世界株式では約3,800万円前後と、大きな差になります。数字だけを見れば「米国株一択」と思う人も多いでしょう。
米国株が優れてきた背景
なぜここまで差が出たのでしょうか。要因は米国の圧倒的な成長力にあります。GAFAをはじめとする巨大IT企業の台頭、強い消費市場、イノベーションを後押しする制度や資本市場の厚み。これらが米国株をけん引してきました。結果的に、米国は世界株式全体の6割近い比率を占めるまでになっています。
全世界株式を選ぶ意味
では、全世界株式に投資する意味はないのでしょうか。答えは「そんなことはない」です。未来は過去と同じとは限らず、米国一強が続く保証もありません。新興国の成長や、欧州の復権が起きればリターン構造は変わります。全世界株式は「どの地域が勝つか」を予測せず、世界全体の成長を取り込む安心感があります。
また、心理的な安定も大きなメリットです。米国株が大きく下落したときでも、他の地域が下支えする可能性がある。長期投資で重要なのは「続けられること」であり、その点で全世界株式は向いているといえます。
投資家が考えるべき視点
重要なのは「どちらが正しいか」ではなく「自分に合っているか」です。高いリターンを狙いたいなら米国株、リスク分散や精神的安定を重視するなら全世界株式。あるいは、両方を組み合わせてバランスを取るのも一つの戦略です。
数字を知ることは大切ですが、それ以上に「どの選択なら20年間続けられるか」を基準にする方が実践的です。途中で不安になりやめてしまえば、本来得られるはずの複利効果を失ってしまうからです。
まとめ
過去20年のリターンだけを見れば、米国株が圧倒的に優れていました。しかし、未来も同じとは限りません。全世界株式は「予測不能な未来に備える」投資であり、米国株は「リスクを取って高いリターンを狙う」投資といえます。どちらが正しいかではなく、自分が納得できる選択をし、それを長く続けることが最も重要です。今日の選択が20年後の自分を作ります。あなたはどちらを選びますか?


